学生読書日誌

学生読書日誌

主に読書感想文をかきます

現代の情報戦小説、『プロパガンダ・ゲーム』を読みました

お久しぶりです。

最近、文章書いてお金になんねーかなぁとか思いつつクラウドワークスとかランサーズとかを眺めていたのですが、やっぱりああいうサイト経由の案件だと、時給制のバイトしてた方がいんじゃね?って思っちゃいますね笑

それでいてノルマ縛りなんかの条件もあったりするので、やっぱり趣味で文章書いてる方が気楽で楽しいなと再認識しました。

という訳で、最近サボり気味でしたがまたコンスタントに投稿していこうと思います。


さて、今回紹介するのは、仙台在住作家・根本聡一郎さんの『プロパガンダ・ゲーム』です。

f:id:akaksou:20171113220801j:plain


本筋からは逸れますが、装丁のセンスが良いですね笑

敢えて引き合いに出すと、朝井リョウさんの『何者』感。

デザインには疎いんですが、顔のないスーツの若者が揃う画には、スタイリッシュかつどことなく不穏な良い雰囲気が伴います。


帯でも触れられていますが、あらすじは、最大手広告代理店の最終選考に臨んだ大学生8人が戦争派と反戦派に分かれ、SNS上の一般人100人に対して"扇動戦"を行うというもの。

ゲームの中身は実際に読んで楽しんでいただくとして、以下個人的に好きだった点を3つほど挙げようと思います。



1.馴染みやすい舞台設定
ぼくがつい数ヶ月前に就活を終えた大学生だからか、就活生たちの真剣味にシラけることなく、臨場感を持って読み進められました。

そうだよな、第一志望の最終選考ならこんだけアツなるよな〜という納得感があります。なんせ、将来的な所得の期待値が決まっちまいますからね。

就職選考上の模擬戦や、SNSという多くの人に親しみやすい要素があるおかげで、むしろ直接的なスパイ小説よりも情景が想像しやすく、彼らのプロパガンダの応酬に臨場感を感じられるのではないでしょうか。

スパイ小説だとどうしても、超人的な頭脳、身体能力を持ったスパイたち個別の活躍にフォーカスがあたりがちで、情報戦という要素は弱くなりがちですからね。


2.リアリティとフィクションのバランスが良い
実際に電通(と言ってしまって差し支え無いでしょう笑)には、ピンからキリまで非常に多様なバックグラウンドを持った人間が選考に挑むそうで、通常なら失笑してしまいそうな就活生たちのキャラ設定、モチベーションにも説得力があります。

ぼくは広告代理店は見ていませんでしたが、もし都内の大学生だったら説明会くらいは行ってみたかもしれません。

また、物語クライマックスでは陰謀論が取りざたされるのですが、それを扱った物語にありがちな、登場人物たちの、「実際にその陰謀を成し遂げる力があるか?」「その陰謀を遂行する動機はあるのか?」という面の説得力の欠落は克服されていると思います。

しかし、1で言及したような比較的身近な舞台設定だからこそ、こうした陰謀論が扱われるのは突飛に感じるという人もいるかとは思われます。


3.答えは読者に委ねられる
現実の大衆の動きを皮肉ったようなプロパガンダ戦、チーム内での意見の対立、クライマックスでの8人の決断など、あらゆる局面で、対立する人々の意見の両方を読者に提示することを意識して書かれています。開戦・反戦それ自体の思想的な是非は別として、どちらも公平に描写しようとの努力が垣間見えますね。
戦争、人種などのデリケートなテーマが現れる小説では、よっぽど文章が上手く無い限り、作者個人のイデオロギーが見えれば見えるほど臭みを感じてしまうのですが、そのような違和感は特に覚えずに読むことができました。

ゲームの流れそのものに関しても、両陣営側に二転三転する情勢が描かれ、どっちが勝つのかなーと素直に楽しめると思います。(両陣営には1人ずつ相手方のスパイが潜入しているのですが、特に反戦派スパイの活躍は、展開が読めていてもなかなかのインパクトがあります!)


以上3点が、自分が実際に読んでみて思ったおすすめポイントです。

一部キャラクターの印象の薄さなどがたまにキズでしたが、選考ゲームのエンタメ性、情報への姿勢についてのメッセージ性ともに楽しめる良い小説でした。

純粋に「扇動戦」「プロパガンダゲーム」を物語に取り入れている小説というのは案外珍しいのではないでしょうか?

(ぼくの印象だと、情報戦に"翻弄される"構造はわりとありきたりな一方で、情報戦を"互いに仕掛ける"という構造は、同じ情報戦モノでも斬新でした。)


就活に複雑な感情を持った若者、というぼくのバイアスが多分に作用していることは否めません(笑)

ですが、とても読みやすくかつエキサイティングな物語で面白かったので、おすすめです!