学生読書日誌

主に読書感想文をかきます

伊坂幸太郎『アイネクライネナハトムジーク』を読みました

この週末、仙台ではストリートジャズフェスティバルなる催しが行われ、街中は歌やアコースティックバンドで賑わい、夏の終わりの寂寥感を吹き飛ばす様な活気に満ちています。

自転車移動が億劫になるレベルで道が混むのがたまにキズですが、こうしたイベントが毎シーズン盛んなのが仙台の良いところだと思います。

そんなことを考えながらフラついていたら、この間読んだ伊坂幸太郎作品を思い出したので感想書いてみようと思います。


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今回読んだのは『アイネクライネナハトムジーク』。伊坂作品には珍しく、恋愛が主題におかれた連作短編集で、各々の物語では、キャラ達の初々しい出会いがフォーカスされています。

元々の執筆のきっかけは、あの斉藤和義から受けた作詞のオファーだそうで、「詩は書けないが物語なら」と"出会い"をテーマにした短編を提供したとのこと。その際描かれた巻頭短編がベースとなったのが本作です。

こうした風変わりなきっかけゆえか、作中には"斉藤さん"なる占い師の様なサブキャラが随所に登場し、それらのシーンでは斉藤和義の曲が引用されています。

生憎ぼくは斉藤和義には疎いのですが、ファンの方はより一層楽しめるのでは。


さて、伊坂幸太郎の魅力と言えば、超絶技巧じみた構成、飄々として魅力的なキャラクター、そして仙台愛(笑)ですが、本作でもそれらがふんだんに発揮されています。

余談ですが、伊坂作品の映像化は大半がキッチリ仙台で撮られてます。


まず構成に関してですが、『グラスホッパー』『アヒルと鴨のコインロッカー』などで見られたような、小さな情景描写を後のクライマックスの呼び水にするような書き方が、相変わらず非常に見事ですね。

例えば、作中の一編『ライトヘビー』では、語り手の女性が電話越しの男と仲を深めていく様子が描かれるのですが、男の正体が明かされた時の驚きと納得感はとても気持ち良かったです(笑)

「男が電話に出られない時期」「友人の読んでいる雑誌の記事」など、初見では気づけないような小さなヒントが散りばめられていたことに後から気づき、爽快に驚かされることが出来ます。

こうも上手く驚かされると、『アクロイド殺し』や『殺戮に至る病』のようなガチガチの叙述トリックミステリーを作者の手で書いて欲しいと思わされますね。『アヒル〜』の構成は割とそんな感じでしたが。


また、短編を跨いだ登場人物たちの関係性の面白さも健在ですね。

本作ではほぼ全ての登場人物が2つ以上の短編を跨いで現れており、従来作品に増して相関図が複雑なのですが(笑)、そのぶん多角的な人物像が垣間見えて味わい深いと思います。


また個人的に気に入ったのが(タイトルは覚えていないのですが)、地下駐輪場の無銭利用者を突き止める高校生たちの話でした。

市民にはお馴染みなのですが、仙台には街中に地下駐輪場が備わっており、その絶妙な使いにくさは最早定番ネタと化しています。それこそ、¥60をケチって路上駐輪する老若男女が後を絶たないほど。

こんなもんどう料理するんだと言いたいスーパーローカルネタを取り上げつつも、上述した作者の強みや高校生男女の纏う青春感は遺憾無く発揮されており、改めて、伊坂幸太郎の筆力には舌を巻くばかりです。



これくらいで今回は終わります。

伊坂ファン、斉藤和義ファンには勿論のこと、仙台市民や日常系のエンタメが好きな人は是非読んでみてほしいなと思います。