学生読書日誌

ハッピーヘブンのふきだまり

主に読書感想文をかきます

2019年に読んだ100冊を振り返り、オススメ15冊を挙げる

はじめに

相変わらず、思い出したかのようなブログ更新になりました。

今年は個人的に「年間100冊の本を読んで感想を書く」という目標を設定していまして、メモ帳やTwitterに書き連ねていた分、ブログにアウトプットする手間暇を割きにくかったのですが、結果、なんとか目標を達成することが出来ました。

今回は、そうやって積み上げてきたログの総括をやってみようかなという次第です。

構成はテキトーですが、今年中に読んだ本を全てリストアップした後、2019年の読書について振り返ろうと思います。

ちなみに、シリーズ・上下巻は各々1冊カウントしています(リストをチラ見していただければ理由は分かるかと)。

 

2019年に読んだ本(読んだ順)

  1. 『プログラムはなぜ動くのか』矢沢久雄
  2. みかづき森絵都
  3. 『東京輪舞』月村了衛
  4. 『その日、朱音は空を飛んだ』武田綾乃
  5. 砂の女安部公房
  6. 『グロテスク 上』桐野夏生
  7. 『グロテスク 下』
  8. 『天才は諦めた』山里亮太
  9. 『エンジニアの知的生産術』西尾泰和
  10. 『立華高校マーチングバンド部へようこそ』武田綾乃
  11. BanG Dream!中村航
  12. 『邪魔 上』奥田英朗
  13. 『邪魔 下』
  14. 『ナナメの夕暮れ』若林正恭
  15. 『死にがいを求めて生きているの』朝井リョウ
  16. 『ニワトリは一度だけ飛べる』重松清
  17. 『DEATH 死とはなにか』シェリー・ケーガン
  18. 『顔に降りかかる雨』桐野夏生
  19. 『天冥の標1 上』小川一水
  20. 『天冥の標1 下』
  21. 『天冥の標2』
  22. 『天冥の標3』
  23. 『天冥の標4』
  24. 『天冥の標5』
  25. 『天冥の標6 上』
  26. 『天冥の標6 中』
  27. 『天冥の標6 下』
  28. 『天冥の標7』
  29. 『天冥の標8 上』
  30. 『天冥の標8 下』
  31. 『天冥の標9 上』
  32. 『天冥の標9 下』
  33. 『天冥の標10 上』
  34. 『天冥の標10 中』
  35. 『天冥の標10 下』
  36. 『矛盾社会序説』御田寺圭
  37. 『アリスマ王の愛した魔物』小川一水
  38. 『ストレングス・ファインダー』ドナルド・O・クリフトン
  39. 『ディープワーク:大事なことに集中する』カール・ニューポート
  40. 『何者でもない』般若
  41. 『ホモ・デウス 上』ユヴァル・ノア・ハラリ
  42. 『ホモ・デウス 下』
  43. 『正義の教室』飲茶
  44. 『難しいことはわかりませんが、お金の増やし方を教えて下さい』山崎元
  45. 『手を伸ばせ、そしてコマンドを入力しろ』藤田祥平
  46. 『ある男』平野啓一郎
  47. 『三体』劉慈欣
  48. 『ままならないから私とあなた』朝井リョウ
  49. 『快感回路』デイヴィット・J・リンデン
  50. 『うそつき、うそつき』清水杜氏
  51. 『バッタを倒しにアフリカへ』前野ウルド浩太郎
  52. 『紙の動物園』ケン・リュウ
  53. 『ヒッキーヒッキーシェイク』津原泰水
  54. 『シーソーモンスター』伊坂幸太郎
  55. 『クジラ頭の王様』伊坂幸太郎
  56. 『麦の海に沈む果実』恩田陸
  57. 『なめらかな世界と、その敵』伴名練
  58. 少女七竈と七人の可愛そうな大人桜庭一樹
  59. 堕落論坂口安吾
  60. 『老ヴォールの惑星』小川一水
  61. 『王とサーカス』米澤穂信
  62. 『夢をかなえるゾウ2』水野敬也
  63. 『夢をかなえるゾウ3』
  64. 『光の犬』松家仁之
  65. 『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとだけブルー』ブレイディみかこ
  66. 『真実の10メートル手前』米澤穂信
  67. 『面白いとは何か』森博嗣
  68. 『生まれ変わり』ケン・リュウ
  69. 『最初にして最後のアイドル』草野原々
  70. 『寝ながら学べる構造主義内田樹
  71. 『青い星まで飛んでいけ』小川一水
  72. 『自分の中に毒を持て』岡本太郎
  73. 『世界で最も強力な9のアルゴリズムジョン・マコーミック
  74. さよなら妖精米澤穂信
  75. 『14歳からの哲学入門』飲茶
  76. 『どうしても生きてる』朝井リョウ
  77. 『Think clearly』ロルフ・ドベリ
  78. 『ワタクシハ』羽田圭介
  79. 『モモ』ミヒャエル・エンデ
  80. 『母の記憶に』ケン・リュウ
  81. 『読書について』ショーペンハウアー
  82. 『乱読のセレンディピティ外山滋比古
  83. 『ゆるくても続く知の整理術』pha
  84. マネーボールマイケル・ルイス
  85. 『Rの異常な愛情』R-指定
  86. 『デス・ストランディング 上』野島一人
  87. 『デス・ストランディング 下』
  88. 『カッコいいとは何か』平野啓一郎
  89. UNIXという考え方』マイク・ガンカーズ
  90. オブジェクト指向でなぜ作るのか』平澤章
  91. 箱男安部公房
  92. 『ヒップホップ・ドリーム』漢 a.k.a GAMI
  93. 『生き抜くための数学入門』新井紀子
  94. 『柔らかな頬 上』桐野夏生
  95. 『柔らかな頬 下』
  96. 『ゲームの王国 上』小川哲
  97. 『ゲームの王国 下』
  98. 『スタートボタンを押してください』ケン・リュウ(編)
  99. ライト、ついてますか?』ジェラルド・ワインバーグ
  100. 『折りたたみ北京』ケン・リュウ(編)

100冊について振り返り

プログラミング関係の技術書等でもう少し冊数は多いとは思うのですが、紹介してもしゃーない&メモが残っていないので、以上100冊になります。

まずリストアップした率直な感想としては、100冊分のタイトル&著者をタイピングするのは想像以上にダルかった笑。偉大なり、Ordered Listと予測変換。ミス等あってもご容赦ください。

さて、振り返りですが、まずは大雑把にジャンル分けしてみようと思います。その後、感想メモの文量が特に多かったモノを個人的ヒットと見なして、詳しく書いていこうと思います。

カテゴリ総括

  • 小説:67冊
  • エッセイ:9冊
  • 専門書:14冊
  • 新書、自己啓発書、その他:10冊

こんな感じでしょうか。正しさを求めるならレーベルで分類するのがいいのでしょうが、そこまで調べ直す気力が起きなかったので、やむを得ずその他枠が発生しました。

見返してみると、やっぱり小説が圧倒的マジョリティですね。特に今年はSFを32冊読んでいたようです(内17冊は天冥の標、恐ろしい)。

そこそこ数を読む中で、個人的には、物語を尋常の世界観から飛躍させて展開することで、逆説的に人間の関係性や精神、社会・技術・自然のあり方について読者に考察させるという要素がSFならではの一番の面白みだなと思いました。現実とかけ離れた世界観を構築するだけならいくらでも可能ですが、著者の科学的洞察によってリアリティを持たせやすい、というのがSFの強みでしょう。

近年SFというジャンルはサイエンス・フィクション以外にもスペキュレイティブ・フィクションという呼ばれ方をするようで、その意味では、Speculative(思弁的)とScientific(科学的)が高いレベルで調和している作品をハマりかけの時期にたくさん読めたからこそ、SFというジャンルの良さに気づけた気がします。

 他のカテゴリだと、エッセイ本の面白さに気づけたのも去年の収穫ですね。

「よっぽどの名作でもなければ、作家や学者以外が書いた本を読んでもなぁ…」と昔は思っていたのですが、評判の良いエッセイをいくつか手にとって見るとこれが面白い。考えてみれば、人間が自分のキャリアや生活を文章にまとめているのだから、そりゃ面白いんですよね(もちろん、そもそもの文章力や著者への関心の大きさにも依りますが)。

他人の飾らない考え方や生き様、熱量を読み取る面白みへのアンテナが立ったのは、HIPHOPを好んで聞くようになったのも案外大きな理由かもしれません。HIPHOPは自己紹介の曲が多い、というのはよく目にする分析ですし。

後は、専門書、新書、自己啓発書その他で25%近くを占めている計算です。

このあたりは、その本から何を得られるか、という有益性の大きさが本の良さに直結してくるカテゴリだと思います。具体的に言語化するならば、「行動・思考に変化が及ぼされたか」「関連分野のより発展的な知識を受け入れられるようになったか」などの判断基準でしょうか。

その点を考慮してこのカテゴリを振り返ってみます。今までだと、知識欲や好奇心は満たせても、自分が変化したか?と問われると首を傾げざるを得ないことが少なくなかったのですが、翻って今年は以前よりも本から多くの栄養を摂取できた気がします。

これについては、今まで読んできた本がどうこうというよりも、自分の生活や本の読み方が変わってきたのが大きいかもしれません。

  • 純粋に読書量の累積が増えたこと
  • 読書とアウトプットが必ずセットになって、記憶に定着しやすかったこと
  • ソフトウェアエンジニアとしての生活が短期的に安定して、時間的・精神的余裕が出てきたこと
  • 仕事日記を書き続けて、自分の行動や思考をメタに意識する機会が増えたこと

ぱぱっと思い浮かぶ要因はこんな感じでしょうか。学ぶために読むジャンルと位置づけている以上、もしかすると学ぶ体制が整っていることは本のクオリティ以上に大事なのかもしれません。当たり前と言えば当たり前ですが。

個別ピックアップ

ざっくりカテゴリの総括が終わったので、小説、エッセイ、その他から数冊ずつ特に良かった本をピックアップしようと思います。

紹介は例によって読んだ順なので、優劣をつける意図は無いです。

小説

小説部門1冊目は桐野夏生『グロテスク』です。

エリートコースに進んだはずの高校の同級生が娼婦となった末に客に殺された、というなかなかパンチの効いた導入からスタートする本作。

ルックス、性愛、賢さ、反骨心、冷笑など、自分の一要素に過ぎないモノを人格と規定してしまい、それに縋る以外の生き方を知らないまま歳を重ねてしまった人間の、カビ臭い救えなさがとにかく印象的でした。

物語の顛末もとても印象的で、ひたすら俯瞰に努めていた主人公のタガが外れるシーンはおぞましくも爽快です。現代版寓話とでも言えるでしょうか。

とにかく、数百文字でカラッと要約するにはあまりにもドロドロべちゃべちゃした陰湿な物語で、孤独に陥る怖さに震えさせてくれます。友人や家族を大事にしようという気持ちが心の底から湧いてきました。逆説的ハートフル物語、というのは流石に無理がありますが……

グロテスク 上 (文春文庫)

グロテスク 上 (文春文庫)

 
グロテスク 下 (文春文庫)

グロテスク 下 (文春文庫)

 

 

2作目は小川一水の『天冥の標』シリーズです。

全10部にして計17冊の一大SF連作長編シリーズ。17/100冊を占めている時点でそりゃそうだろってツッコミが入りそうなくらいには順当な選出ですが笑。

ラフに紹介するならばSF群像劇版ハリー・ポッターって感じですね。かの不朽の名作を持ち出しても十二分に耐えうる素晴らしい大長編でした。

掻き立てられる好奇心と想像力、歴史的・空間的なスケールの大きさ、上位存在への畏敬や恐怖、スリリングな展開、キャラクターの関係性、タイトル回収ポイントなどなど、一冊の単編SFだとどうしてもこぼれ落ちてしまうエンタメSFの良さを余さず飽きさせずてんこ盛りにしたようなシリーズです。

話の本筋はドシリアスですが、サブエピソードの差し込み方が箸休めにちょうどよく、邦作なのも相まって、全巻並べた時の圧の割に断然読みやすかったです。

天冥の標Ⅰ メニー・メニー・シープ(上)

天冥の標Ⅰ メニー・メニー・シープ(上)

 

 

3冊目は『紙の動物園』です。ケン・リュウによるSF短編集ですね。

とにかく著者の引き出しの多さにビビらされます。読んだ後気になって経歴を調べてみました。以下WIREDより引用です。

中国・甘粛省生まれ。8歳のときに米国に移り、以降カリフォルニア州コネチカット州で育つ。ハーヴァード大学にて英文学、コンピューターサイエンスを学ぶ。プログラマーを経て、ロースクールにて法律を勉強したのち、弁護士として働く。

 付け加えるなら、プログラマとして入社したのはマイクロソフトだそうです。マルチタレントにも程がある。

また、著者は中国系アメリカ人ですが日本文化にも造詣が深く、本書収録の『もののあはれ』は日本人なら一読の価値ありだと思います。

著者の作品は本書が初めてだったのですが、宇宙や死、文字への洞察に何度も唸らされ、自然の神々しさに生で相対するのに近い読後感でした。読む高千穂峡(?)。これを読んだ後、気づいたら日本語で読めるケン・リュウ編著作は全部ポチっていました。

全編通して謙虚さと知性にあふれており、まさに科学的にして思弁的な作品でした。個人的には『もののあはれ』以外だと『紙の動物園』『文字占い師』『愛のアルゴリズム』『円弧』『1ビットのエラー』が好きです。

紙の動物園 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

紙の動物園 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

 

 

4冊目は『どうしても生きてる』 。朝井リョウによる短編集です。 

本作は、主人公たちの造形の今っぽさやトレンドの咀嚼の上手さからくる説得力が読み応えに繋がっていますが、著者の強みである観察力が相変わらずキレッキレに働いているのだと思います。

内容ですが、「正論に則れない」「自分や他人に後ろめたい」「将来が不安」「本音を吐露できない」「誰にも苦労に気づいてもらえない」「とにかくハズレくじを引かされる」等々、各短編よくもまあここまで取り揃えたなと感嘆するような、バラエティに富んだ生き辛さが織り込まれており、ヨルシカとかamazarashiとか聞きながら読むと相乗効果でだんだん死にたくなるパワフルさでした。特に『流転』は刺さります…。

しかし最終編『籤』まで通して読むと、「人間を活かすのは、燃えるような情熱でも冷めきった惰性でもなく、瞬間瞬間の気力やたくましさ、しぶとさなのだ」というようなメッセージが読み取れて感慨深かったです。励ましにしては皮肉が強いですが笑。

どうしても生きてる

どうしても生きてる

 

 

ラスト5冊目はミヒャエル・エンデの『モモ』です。

少女モモが、灰色の男たちによって人々から盗まれた時間を取り戻すために奮闘するというあらすじの児童文学で、小学校の図書室で読んだことがある人も多いようです。

知人から勧められて読んだのですが、子供向けに書かれたとは思えないほど含蓄深い作品です。死ぬほど陳腐な表現ですが「むしろ大人こそ読むべき本」というやつで、現代社会に生きる人間にとっての時間とはどういうものかを強く訴えかけてきます。日本のサラリーマン全員が本書で語られるような考え方を持つことができれば、10倍くらい社会は豊かになるのではないでしょうか

後に紹介する『Think clearly』と併せて、労働者の一人として資本主義を相対化する感性を養ってくれた一冊です。

モモ (岩波少年文庫(127))

モモ (岩波少年文庫(127))

 

 

エッセイ

続いてエッセイ部門1冊目は『ナナメの夕暮れ』。

オードリー若林のエッセイで、『社会人大学人見知り学部 卒業見込み』の続編のような位置づけです。充分単体で読めますが、前作を読んだ上で本作を読むとより楽しめます(キューバ本がどういう位置づけなのかはちょっと分かりません)。

そこまで数を読んできたわけではありませんが、若林のエッセイは他のものに比べても突出して内省的だと思います。省みる対象も、素朴な日常の出来事と言うよりは、それら出来事に対するマジョリティの人々と自分の間の感性のズレを俯瞰するようなものが多いです。

しかし前作と比べると、そのズレに向き合う姿勢がかなりポジティブになっている印象を受けます。著者は、40歳になってまで斜に構えていられない、という旨の発言をたまにメディアでしていますが、ひねくれを克服するまさにその過程が描かれているのが本作なのでしょう。

自他共が認めるひねくれ者の自分としても共感する部分がとても多く、楽しく読み終われました。

ナナメの夕暮れ

ナナメの夕暮れ

 

 

2冊目はラッパー般若の自伝『何者でもない』です。

本作については、少なくとも『フリースタイルダンジョン』程度には日本語ラップを知っていないとハマらないかもしれませんが、逆に言えばその程度の知識か関心があれば楽しめる本だと思います。

自分は『ダンジョン』で日本語ラップを知ったのですが、「なんでこの人がラスボスやってんの?」という素朴な疑問へのアンサー足り得る自伝です。「生き様でラップしてる」と称されるだけあって本書の熱量はかなりのもので、惹き込まれました。

また、これは本書の内容からは離れるのですが、「自分がどの媒体から一番感じ取れるか」というのを考えてみた時に、やっぱりそれは文章なんだなぁという気づきがありました。内容との直接の関係はありませんが、ラッパーの自伝を読むという結構特殊な体験を経たからこその観点だったと思います。読み物としてのクオリティも高いですが、そういった新鮮さも込で選出しました。

何者でもない

何者でもない

  • 作者:般若
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2018/12/13
  • メディア: 単行本
 

 

3冊目は前野ウルド浩太郎『バッタを倒しにアフリカへ』。

昆虫学者である著者が、サバクトビバッタの防除技術開発の手がかりを見つけるためにアフリカで奮闘するエッセイです。

「 アフリカに単身遠征するバッタ研究者」という数奇さで売れた本なのかなぁと思いつつ読んでみましたが、自分の中でノンフィクション史上一番と言えるくらい面白かったです。

著者の説明力は流石専門家といった感じで、バッタ問題の現状や解決した際のインパクトが臨場感を伴って伝わりました。加えて、経験をエモーショナルに書き上げる文章力も抜群で、実績を挙げて常勤ポストを勝ち取ろうともがく著者の姿は素直に応援したくなります。

また、全編の文章を通して、著者の中で科学者として当たり前になっているのであろう仮説検証の考え方が現れているのを感じられて、これが研究者の思考回路かと新鮮な気持ちで読み進められました。

バッタを倒しにアフリカへ (光文社新書)

バッタを倒しにアフリカへ (光文社新書)

 

 

4冊目はブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとだけブルー』。

著者がハーフの息子とのイギリス生活を通して、多様性、他者へのエンパシー(共感)のあり方を考察するエッセイです。

この本を選出した理由は他と毛色が違って、「読んだ後に反論したいことがたくさん湧いてきた」というものなのですが、自分の良しとする多様性について考える機会として印象強かったという意味ではオススメの一冊です。

本書の大筋は「マイノリティに対するエンパシー」を重んじよう、"他人の靴を履いて"みようという素朴な主張だと思うのですが、それを伝えようとする著者の視野が無垢すぎて頷けないところが大きかったです。

「寛容のパラドクス」なんて言葉も聞いたことがありますが、不寛容な人々に対する著者の無自覚な不寛容性が文体から感じられてしまいます。異物を排除する社会の中で"快適に育ってきてしまった"人たちに多様性を尊ぶことを求めるのは無理な話ではないでしょうか?

そういう不愉快な現状を受け入れた上で試行錯誤しながら、個人レベルで自省と実践を繰り返していくことでしか、人々が真に寛容さを発揮する社会は作れないのではないかと自分は思いました。

もちろん、(自分を含めて)人間が自らの価値観を100%俯瞰するのは原理的に不可能であり、その前提のもと可能な限り嫌味っぽくならないように配慮を巡らせているのは読み取れましたし、純粋にイギリスで暮らす一家のノンフィクションとしては楽しんで読めました。

ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー

ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー

 

 

その他

その他部門と称するとスゴく雑な感じが出ますが、1冊目は矢沢久雄『プログラムはなぜ動くのか』です。

OS、メモリ、CPU、バイナリなど、ITに携わらずとも一度は聞いたことのあるであろうコンピュータの基礎についてとてもわかり易く書かれています。基本情報技術者試験に臨むにあたって、参考書の前に本書を読んでいたのはかなり合格に寄与したなという体感がありました。

ソフトウェアの仕組みに興味があって、知識を学んでみたい、というような人におすすめできる本だと思います。

プログラムはなぜ動くのか 第2版 知っておきたいプログラムの基礎知識

プログラムはなぜ動くのか 第2版 知っておきたいプログラムの基礎知識

 

 

2冊目は『世界で最も強力な9のアルゴリズム』です。英ディッキンソン大学のコンピュータ・サイエンスの教授ジョン・マコーミックが門外漢向けに現代のITの基盤となっているアルゴリズムを紹介します。

アルゴリズムといっても、データ構造とアルゴリズムの講義で学ぶようなものではなく、Google検索や暗号化、圧縮など、日常で使われるITサービスに直結したものがメインなので比較的馴染み深いと思います。

本書でとにかく凄いのが、全くの素人でも分かるようにほとんど専門用語を使わずに解説をやりきっている点です。「こんなのどうやって達成するんだよ?」という問題を鮮やかに解決するアイデアを、丁寧に順を追って説明してくれるので、まさに腑に落ちる感覚が味わえます。

世界でもっとも強力な9のアルゴリズム

世界でもっとも強力な9のアルゴリズム

 

 

3冊目は飲茶『14歳からの哲学入門』。

その名の通り、砕けた文体で哲学者たちの主張を解説する入門書です。表紙の意図は謎ですが、今まで読んできた哲学入門書の中では一番わかり易い&面白かったです。

本書は哲学史をなぞっていくような構成になっているのですが、各哲学者の主張が、どのような点で前代の通説へのアンチテーゼとなっていたのか、というポイントを特に注力して書かれているので、思想の流行り廃りの流れがよく分かります。

また、各学者の各論の面でも、テンプレ的に主張を解説するのではなく、「一見トンデモっぽい部分がその学者の主旨に対してどのような意義を持っているのか」等までカバーしてくれる、痒いところに手が届くような構成になっていて好感が持てます。

個人的には、流行と超克という本書の構成に則ってポストモダンの哲学に著者が切り込む終章の伏線回収感がアツくて好きです。

14歳からの哲学入門: 「今」を生きるためのテキスト (河出文庫)

14歳からの哲学入門: 「今」を生きるためのテキスト (河出文庫)

 

 

4冊目はロルフ・ドベリ『Think clearly』。

ストア派哲学等に着想を得た今風の自己啓発書です。

まあ陳腐なジャンルだとは思いますが、これが読んでみると意外と新鮮で面白かったです。「良い人生が何かはわからないが、良くない人生の要素に逆張りすることはできる」という著者のスタンスや、全体的に地に足がついていて省エネ志向な雰囲気は、押し付けがましくなくてオリジナリティが有ったと思います。

自分が日常の中で言語化せずとも考えていたことの一部がTips集としてまとまっていた感覚でした。

個人的には、立ち読みの重要性を再認させてくれたという意味でも印象に残っています。アレな本かなと疑いながらも暇つぶしに斜め読みしてみると、意外と良いことが書いてあって、見た目や売り方だけで判断するもんでもねーなと思わされました。

Think clearly 最新の学術研究から導いた、よりよい人生を送るための思考法
 

 

5冊目はpha『ゆるくても続く知の整理術』です。

著者の経験則から抽出したラクして勉強するためのガイド本で、いかに勉強を習慣化するかという方法論を紹介しています。

タイトル通りのゆるい雰囲気で紹介される方法論は、徹底的なやる気への諦観とロジカルさに裏打ちされており説得力があります。そのギャップを感じるだけでも面白みがあるかもしれません。

本書と『Think clearly』は特に、上述のような心持ちの変化が有ったからこそ楽しめた本だったと思います。平穏な向上心とでも言いましょうか、期待しすぎず冷笑しすぎずのバランスを保ち、使えそうな知恵は取り入れるという姿勢がキープできるようになったのは我ながら感慨深いですね。

ゆるくても続く 知の整理術 (だいわ文庫)

ゆるくても続く 知の整理術 (だいわ文庫)

  • 作者:pha
  • 出版社/メーカー: 大和書房
  • 発売日: 2019/11/09
  • メディア: 文庫
 

 

個別ピックアップラスト、その他部門6冊目はジェラルド・ワインバーグライト、ついてますか?』で、問題発見の人間学という副題の通り、問題解決という営みそのものについて論じた本です。

ロジカルシンキング等具体的な方法論について語っているというよりは、問題解決に当たる際の心構えを説いた本ですね。

「問題とは理想と現実認識の差異である」という言葉の定義に基づいて、問題のあらゆる側面(現状認識、理想定義、原因、関係者、解く必要性等)をメタに考えることから良い問題解決が生まれるのだ、ということを著者は伝えようとしています。

問題解決は本質的にメタ思考が要求される、という立場からの主張は、書籍として新鮮かつ自分の考え方に近く、興味深く読めました。

ライト、ついてますか―問題発見の人間学

ライト、ついてますか―問題発見の人間学

 

 

終わりに

最後に、この100冊チャレンジをやってみた感想そのものについて書いて、過去最長の本記事を締めくくろうと思います。

このチャレンジ、「読んだ冊数マウンティングは巷でよく見るけれど、ぜーんぶ記録に残してきたような奴っているのか?いねぇだろ??」というよくわからない仮想敵への反骨心から始めたのですが、終わってみればとてもやってよかったです。

まず、様々な本に対して、率直な感想、面白かった/つまらなかった点とその理由、読後の考え等を言語化するのを1年間継続したことで、自己理解、文章の要点を読解する力&それを要約する文章力がそこそこ深まった気がします。

今後の課題?も見つかりまして、好みのタイプの文章や主張の輪郭は鮮明になった分、自戒やアンチテーゼになってくれるような本があまり読めていないというのも16冊の後半7冊を選出する中で強く感じました。もちろんエンタメとしての読書ならそれで良いのでしょうが、一応目的意識を持って読む本もある以上気にかけたいところです。これは多分この記事を書かないと気づけないポイントでしたね。

あとは副作用的に、本の読み方が効率的になりました。本は通読しないと気持ちが悪くて読んだと言えないタチだったのですが、サラリーマンやりながら100冊という数を稼ぐためには、つまらない本は斜め読みして途中で閉じる勇気が必要でした笑。『読んでいない本について堂々と語る方法』という本をブログで紹介したことがありましたが、そこで述べているような態度を修行を通じて体得したような感覚です。

kyuteisyukatsu.hatenablog.com

また、この振り返りまで含めてやりきったことで、自分が読んできた本が全て一覧化されたのも楽しかったですね。日記代わりのライフログのような感じで、自分の足跡が外部に積み重なっていくのはシンプルに気持ちよかったです。

ただまあ、冊数を目標として本を読むのはもうやらないつもりです笑。というのも、単純に重たい本に挑戦する気持ちが萎えるからです。今回のチャレンジで計算すると1冊/3~4日のペースで本を読み続ける必要がありますが、その中ではハードカバーの専門書は必然的に後回しになりました笑。毎回言ってる気もしますが、骨太な作品への挑戦を増やしていきたいですね。

 

さて、振り返ってみるとかなり多くの発見がありましたが、とりあえず2020年は、記録は継続しつつも気張らない読書を楽しみたいと思います。

ここまで読んでくださりありがとうございました。友人知人それ以外の方も、よかったら反応くれると嬉しいです笑。

世界でもバカ売れ、中華SFの金字塔『三体』を読んだ

三体

 

「われわれは、平面上にある円の中に、上から簡単に入ることができます。しかし、平面上にいる二次元生物が閉じた円の中に入ろうと思えば、円を壊すしかありません」

 

今回は、中国国内で2100万部売り上げオバマ前大統領やザッカーバーグもハマったという、現代のモンスターSF『三体』の感想をネタバレ抜きで書きたいと思います。

相当なボリュームだったんですが、SFにありがちな冗長さは全くなく、楽しく読み切ることができました。

以下、早川書房から引用のあらすじです。

尊敬する物理学者の父・哲泰を文化大革命で亡くし、人類に絶望した中国人エリート女性科学者・葉文潔。彼女が宇宙に向けて秘密裏に発信した電波は惑星〈三体〉の異星人に届き、驚くべき結果をもたらす。

 

この作品で個人的に一番すごいなと思ったのは、「こういう経験を経てきたこの人にしかこれは書けないだろうな」という強い作家性です。印象に残った一節を紹介します。

お義父さんはこのことを回想してから、わたしにこう嘆いた。

中国では、どんなにすばらしい超越的な思想もぽとりと地に落ちてしまう。現実という重力場が強すぎるんだ、と。

あらすじでも紹介されている通り、『三体』の根幹となる異星人とのコンタクトの引き金を引くのは「現実という重力場」に押しつぶされてしまった女性科学者なのですが、彼女がその決断に至るまでの文化大革命での経験の生々しさは、ほかのどの国の人間でもなく、中国人にしか書けないでしょう。

本書では、彼女の動機を形成することになる様々な事件が折々に描かれるのですが、そこから生まれる人間集団への諦めは、葉文潔のものというよりむしろ著者本人のものなのではないかと邪推してしまうほどです。全体的に淡々として読みやすい文体も、この点においてはドライさを醸し出すのに一役買っている気がします。

(中国では本書の歴史的大ヒットを皮切りに、著者が国家的にも文化的にもSFバブルの旗頭のように扱われているらしいですが、葉文潔を通してうかがう著者の目線を勝手に想像すると、なんだか皮肉な構造な気がします…)

かといって、この本が絶望した科学者の冷淡な復讐劇にとどまっているかというと、もちろんそんなことはありません。むしろ、エピローグを読んだ後は、決断を下した後のシーンをピックアップして、もう一度彼女の内面をたどりたくなるはずです。エモーショナルなエピローグの見え方が、きっとほんの少し変わるでしょう。

彼女が峰の頂から眺めた「落日」の真価は、いったいどのようなものだったのでしょうか?

 

 

 また、純粋にSF小説として読んだ時の知的好奇心の湧き立て方も上手いです。

一流の科学者たちを突如として襲う様々な怪事件、「一見シンプルに見えて、人の制作したものとは思えないほどの情報量を持つ」VRゲーム、数学的に解くことのできないとされる三体問題、次元の壁などなど…

思い出しながら書いていても盛りだくさんな内容に、もう一人の主人公汪淼が挑みます。

こちらのパートは一転、とてもテンポのいいサスペンスのような面白さです。

再三言及する通りの高い文章力で以って、普通ならウンザリするような難解なテーマも、ワクワクしながらページをめくる原動力へ変えてくれます。

重厚なSFにもかかわらず読者を飽きさせないのは、著者の経験や文章力のみならず、シナリオの構成力も白眉であるということでしょう。伏線の仕込み方も鮮やかだなと思いました。

(上述したシンプルでとるに足らないように見えて情報量が尋常でないという描写を気に留めておくと、33章でニヤニヤできると思います笑)

 

 

さて、自分的推しポイントはこんな感じです。

 

しかし、この記事を書きはじめながら思ったんですが、視点を変えた途端、読み終えたときにはあまり気に留めなかった文章にひそめられた意図や情感のようなものがどんどんと湧いてくる作品でした。

ライトなSF読者な自分でもストレスフリーに楽しんで読了できた裏に、未だ発見できていない緻密な構造や要素が大量に組み合わさっているのでしょう。さながらよくできたソフトウェアサービスのようですね…。

これが三部作の第一作ということで、よりパワーアップしたものが後2つも邦訳を待っているらしいです。めっちゃ楽しみ(笑)

 

ということで、『三体』感想でした。拙文ながら、きっと興味を持っていただけたことかと思います。ぼくの友人で読書好きな皆さんは、読んだら報告ください(笑)

 

PS.検索していたら、WIREDに一部の章が無料公開されていたので貼っておきます。

いきなりハードカバーは重い、って方もぜひ読んでみてください。

wired.jp

 

岡本太郎がすげぇって話

 昨晩、今年はじめてクーラーをつけて眠ったら寝起きがメチャメチャ良くてびっくりした。寝起きの頭の重さに悩まされていたが、そろそろそういう季節なのか。

カフェインを暴飲しようがブルーライトの直射を浴びようがスッキリ起きれることもあれば、寝る前にいろいろ気をつけても、起き抜けの不快感はむしろ増したりもする。睡眠に何が効くか、というのは永遠の難題だ。QOLに直結する分タチが悪い。

 

そんなノリで起きた土曜だが結局正午過ぎまでダラダラしており、Youtubeのサジェストを2周くらいした後なんとなく読んでいたのが岡本太郎のエッセイ『自分の中に毒を持て』だった。

もはや自分がいつポチったのかも覚えていないし、岡本太郎で連想するのも「太陽の塔」「芸術=爆発」とかそのくらい。なぜ買ったのかすらもよくわからない笑

 

しかし、ラーメン屋の待ち時間を持て余してカウンターの「当店おすすめの食べ方」を読む、みたいなスタンスで開いたこの本、思っていたより刺さった。

要約すると「三日坊主上等。興味に抗うな」「駄目なときはしゃーない。駄目さを受け入れろ」「とにかくなんでもやれ」「自分との戦いが全て。他人を行動基準にすんな」といった雰囲気。

 

まあエッセイだし賛否は人それぞれだろうが、個人的には違和感なく入ってきた。

 

面白いのが、最近の心理学とかメンタルとかでも「セルフ・コンパッション」という文脈で似たような主張が流行っているところ。「ハーバードの〜〜」とかそういう売り文句のビジネス書も自分は割と読んでいたけれど、ホントに内容が似てる。

第一版は25年くらい前に出版されたらしいが、「なんか破天荒で有名っぽい」という岡本太郎への浅ーーいイメージからすると、(思想には流行り廃りがあるのを割り引いても)思ったより普遍的なことを言っていて意外な感じ。

 

今書きながら思いついたが、彼が破天荒だとか型破りだとか言われていたのは、昭和の時代との対照性も大きいのかもしれない。

「個人のメンタル充実主義」とでも言える彼の思想と、それを曲げずに体現してはばからない彼の生き様は、「周りのアイツラより出世して稼ごう」「足並み揃えて皆のために頑張ろう」みたいな価値観の中では確かに異色だろう。昭和、生まれてないから知らんけど。

岡本太郎、案外現代の若者と話があうかもしれない。

 

 

さて、思想が流行る土壌がその時の社会情勢に有るのと同じで、ある本を手にとってそれが刺さるかどうかも読者の感受性次第だ。つまりタイムリー性が全て。

この本を読んで楽しめたのも、最近自分がそれっぽい生活を心がけているからかもしれない。

 

エンジニアとして配属されて約半年、いろいろと思うところや心労があった。しかし、上を見れば理系院生や海外のコンピュータサイエンス専攻がゴロゴロいる中で他人とスキルを比較しても仕方がない。物差しは自分の過去にしか無い。

 

また、そこそこ金銭的に余裕が出たことで、「このまま自分のためだけに生きるのって限界じゃね?」としばらく虚無に浸っていた時期があった。しかし最近は、開き直ってやりたいことを追求する私生活を送れている気がする。

俯瞰的に自分を見つめてみれば、突発的な鬱くらいには立ち向かえる熱の種がどっかしらに残っているものらしい。何もないなら休めばいいし。

例えば最近、下手の横好きながらエレキベースをいじくり回しているが、これがやってみると無心になれて気持ちいい。「いやいや、今更音楽始めるとかww」という自分は楽器をポチった瞬間にいなくなる。ひねくれた自意識を殺すには行動有るのみだという貴重な学びを得た。

 

(↓今挑戦している曲:イギリスのロックバンドBring Me The HorizonのThrone。イントロから超テンション上がるイケてる曲)


Bring Me The Horizon - Throne (Official Video)

 

 

読書と生活のオーバーラップについて一般論を書くつもりだったのが、例のごとく自分語りに陥ってしまった。まあ個人ブログだししゃーない。

 

 

とりあえず、BMTHはいいぞ。

イモムシがサナギになった話

最近、とにかく物事への興味・関心が薄れてきた。虚無とは違う無気力という感じ。

良くも悪くも感情の動きが凪いできたといった感じで、過去の自分の言動やブログ記事を振り返ってみると、どうしてあんなにも劣等感や羨望や攻撃性を燃やし続けられていたのか不思議なくらいである。

この土日は意図的に暇を謳歌しているので、せっかくだし考えていた原因を言語化してみようと思う。

 

一番考えやすいところとして、現在の職種柄「周りを意識している暇があったらスキルアップだ」というような規範意識が常にあるのは原因のひとつかもしれない。エンジニアとして働くことになり、それなりに向いてはいるのだろうけどいかんせんベースが足りな過ぎて、余計なことを考える暇があまりない。

 

社会的な変化としては、少なくともこれまでのコミュニティのように数年が経過すれば是が非でも次の環境に放り出される、というような、将来に対しての、いい意味では可能性、悪い意味では不確かさのような幻想に終止符が打たれたことも大きいだろう。

これからの人生、何かしらの転機を求めるのであればそれなりの能動性が求められる。何者でもないから何者かになれるはずだ、という若気が醸す蜃気楼みたいなものが霧散し、事実として社会の中でひとつの役割を充てられている。

 

また、定期的な収入源を確保したことで、少なくとも自分が想像できて、かつやりたくなるような贅沢くらいなら、わりと初任給でまかなえてしまうことに気づいた。

これがどういう心境を招くかというと、自分のためだけの生活なら、今後ほぼ何の努力も必要ないことがわかってしまうのである。だってそうだろう。物欲、見栄、家庭といった、昇給を目指す動機の一切が存在しないのだ。今後それがどう転ぶかは誰にもわからないし、今はそうとしか思えないという話ではあるが。

もちろん、金銭的な心配をしなくて済むのは素晴らしい。親の無い袖を賽銭箱前の鈴のように振り回すのは精神衛生に良くない。自立している感覚は、少しだけ自分をタフにしてくれる。

 

より抽象的な意味での変化としては、人をあきらめる勇気を持てるようになった。

入社してからの人間関係は想像していたよりもわりとダルく、ここで悪口を書き連ねても無益なのでやらないけれど、まあ一苦労した。

しかし、そんなこんなでグダグダとやっていく中で、怪我の功名的に、他人と自分の心的距離の取り方を学んだ側面がある。

「他人と過去は変えられないが、自分と未来は変えられる」という言葉がある。不愉快なら離れればいいし、快適なら一緒にいればいいだけの話で、相手や環境に何かしらの変化を期待するのはあんまり意味がない。

問題への立ち向かい方は、ぶつかるか、耐えるか、離れるか、それを問題ではないかの如く捉えなおすことのいずれかでしかなくて、それらの手段が要するコストと、もたらしてくれるリターンの比較衡量が全てだろう。後者が前者を上回ることは、企業の中では限りなく少ない気がする。

(こうした人間関係の問題は、多くの苦楽を共に積み重ねて乗り越えるだけの時間があれば、また違う結果をもたらすのだと思う。「会社の人間関係」においてそれは望みにくいだろうし、あえて望みたくなるようなことも少ないという話だ)

一言で言ってしまえば、大人の対応を体で学んだとでもまとめられるだろうか。だいぶ乱暴な気もするけど。

と、ここだけでこの段落を終わらせると、知恵を付けた社会不適合者の負け惜しみにしか見えないと思う(笑)。ここまで明け透けに吐き捨てられるのは、自分をさらけ出したうえで仲良くやってくれる友人が少なくない数できたおかげだ、と言うことは補足しておきたい。感謝。

 

ここまでいろいろ要因を書いてきたけれど、これらをひっくるめるとたぶん、現実と向き合ったうえで自己肯定感を得られたという言葉に帰着できるのではないだろうか。月並みな言葉だけれど。

 

冒頭で上げたようなコンプレックスからくるモチベーションの形は、適切な自己肯定感と表裏一体なんだろう。これまでの自分はそれを燃やして燃やして歩いてきたわけだが、幸か不幸か、エンジンの形が変わってしまった。それが不可逆的な変化なのかはわからないけれど、それ故に、外界への気持ちのベクトルが縮小した。

丸々22年生きてきて、のたうち回っていた自意識というイモムシが、サナギという形に安定したのだ。そこから蝶が出るか毒蛾が出るか、それとも枯れ死ぬのかはわからないけど、なるようになるだろう。

遅すぎた思春期の終わりか、早すぎた達観の始まりか。たぶん前者。

三日坊主の分水嶺

更新頻度あげようチャレンジの3日目。

今日キーボードの前に向かえている自分を褒めてあげたいが、あいにく会社と家の往復生活ではなかなか書くようなことも生まれない。

まあこのブログの記事もあまり社会人丸出しだとあれなので、たまには力を抜いて散文的にやる日があってもありかもしれない。

 

散文的で思い出したけれど、最近全く小説を読んでいないことに気がついた。いい感じに手が出しやすい積ん読レパートリーも底をついた。

どうにも、限られた時間で娯楽を摂取しようとするとYoutube、ニコ動、漫画によってしまう。

文芸系の本を買って読んだのは2ヶ月前らしい。この実績は個人的に険しい。週休三日は欲しい。

 

週休三日といえば、世間はすでに夏期休暇モードの雰囲気だ。かくいう俺も盆の9連休を生成した。

チームメンバーにも気の早いやつがいて、明日から2連休にして実家に帰るという。

周りがそんな感じなので、いやでも俺もカレンダーを見る。いわゆる平成最後の夏が終わりそうなのを実感して気持ちが下降気流だ。暖房器具つけてんのかってくらいな暑さがエンドレスで続いてる。脱水だとか、栄養成分の欠乏だとかには気を付けよう。

 

そろそろ連想ゲームの限界だ。

三日坊主の分水嶺と題して、自分が書くのに飽きないように、今回押韻をねじ込もうとしたけどやっぱむっずいね。

明日も天気予報はカンカン照りだけど、体とメンタルをいたわって楽観的に働いていきましょう。

 

チーム作業の要点を3つまとめてみた

今日の記事は完全にセルフ備忘録である。Progateが鯖落ちしてガン萎えしてるので、暇つぶしがわりに。

 

弊社の現在の新卒研修においては、人事部の人材開発チームだけではなくあるエンジニアチームのリーダーもメンターとして参加してくれている。非常に尊敬できる人だ。

本日その人から、チームでの仕事において意識すべきことについていろいろとFBを頂いたので、メモとして残しておく。

 

1.日々チームを絶対的に良くすることを考えるべし

2.他人は変えようとせず、受容せよ

3.モチベーションの一致する領域を探す

一言でまとめると各々こんな感じになる。以下それぞれ説明する。

 

1について、会社なんかだと結果を出せているチーム、そうでないチームがばらけることになるが、チームは複数の違う人間による化学反応の産物であり、ほかのチームのやり方を猿真似したところでチーム環境は良くならない。

なので、ほかのチームがキラキラしている様子に左右されず、「自分のチームが1日1%でもいいから良くなっていくためにはなにをするべきか?」という視点を持たなければいけない、という話だった。

そして、とてもリアルな話だなと思わされたのがこの点で、「自分が潰れそうなときにチームのことなんて考える必要はない」という留意点がついている。問題を解決しようとしてミイラ取りがミイラになるな、という意味合いだ。

チームのパフォーマンスを考慮するからこそ、まずは自分のコンディション優先であるべき。至言だと思う。

 

2についてはそのまんまで、その人の価値観はその人が能動的に改める以外で変わることはないので、変えようと働きかけるだけ無駄な話だし、何よりそれは傲慢である。

メンター氏曰く、「差異は学びのいい機会」ということだった。

しかし、ここでも現実的な防衛ラインは考慮されており、「差異を受け入れることと相手に迎合することは違う。キャパを超えるくらいなら疎なコミュニケーションに切り替えろ」とのこと。

 

3について、たとえば、とりま出社して食い扶持稼げればいいやという人間と、できるだけ実績を上げて評価されたいという人間では、モチベーション構造が全く違うし、2でも言及したとおりそれを無理にすり合わせるのは厳しいものがある。

しかし、この例で言えば、「仕事を定時の中で終わらせるために、少ない時間で多くの成果を出す」というような目標設定をしてあげると、両者共のモチベーションを(完璧ではないにせよ)刺激することができる。

そのためにリーダーは、何よりメンバーの性格や考え方を冷静に把握しなければいけない」らしい。今の自分には荷が重そうである。

 

以上の3つが今日のフィードバックの内容である。

ぱっと見でわかるように、世界中のあらゆる共同作業で通用する普遍的な原則だ。せっかく文章に残したことなので、しっかり肝に銘じていきたい……。

 

社会人生活を4ヶ月終えて

7月が過ぎ去りプロダクト開発研修を終えた。思ったより評価が良かったものの、自分の意図していた部分での良さは発揮しきれず反省半分達成感半分といった感じ。

一息ついて、なりを潜めていたサブスキルのトレーニングへの意欲が沸いてきたので、この夏は文章を書く頻度をあげる。あげたい。あげよう。

プライベートを有効に使って、会社への相対的な依存度を下げること。大事なテーマだと思う。新卒一年目からこんなこと言ってるのもどうかと思うが、業務への真面目さと相反するものではないだろう。

できればがっつり本の感想とか書きたいんだけれど、あいにくあと30分以内に書き上げないと8時間睡眠が保てないので、今日のところは近況日記でお茶を濁します。

 

さて、一波去ってまた一波。残りの二ヶ月の研修期間は志望に応じてOJTケーススタディかに分岐する模様。

自分はOJTコースを選んだ。そっちの同期はだいたい70人ちょいで、改めてチームも再編されるらしい。この4ヶ月、大学でいかに同質コミュニティに依存していたか痛感させられ、またチームビルディングからか……と若干憂鬱な気持ちではあるけれど、新しい環境への期待も保っている。

謙虚さと自尊心の両立。環境変化に際して、改めて肝に銘じて同じ轍を踏まないようにしたい。抽象的すぎて何言ってるかわからないと思うけれど、要は、わりとつるんでた同期に人間性を理由に絶縁されました(笑)

言葉で殴り合っていいのは弁護士とラッパーだけ。小学校の近くに貼ってた標語感がすごい。クソ暑い夏の住宅街を歩いていると小2とかの夏のプール帰りを思い出してノスタルジックになる。

 

近頃めっちゃ推してる山口周という外資コンサルタントの方が言うには、コミュニティが激変するとき人間の感情カーブは3~6ヶ月で下がり目・底辺に至りがちらしい。周りの友人たちを見ても、理由は十人十色でありながら苦労しているひとが多いっぽい。

社会心理学(?)的に普遍的なことらしいので、いい感じに相対化しながらトンネルを抜けよう。(自戒も含めて。)

夜が明ければ朝は来るし、台風一過で青空だ。

 

夜も更け、話題のジャンプ力もなくなってきたので今日はこの辺で。